宝島のチュー太郎

20年続けたgooブログから引っ越してきました

    冬でも生のまま舐める、店主はそれが好き

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例えばこんな 4/6

 

 

 

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例えばこんな【13】


 ケイにフラれたから、リコとは、それはなかったことにして継続。
そんな訳にはいかないだろう。
いくら【都合のいい女】でも、そういう訳にはいかない。
なので、リコにも事情を明らかに。
それが、僕という男のせめてもの矜持だ。

 すると、
「わかった。でも、最後にお願いがあるの。その人に会わせてほしい」
「え?でももうオレ、フラれてるんだよ」
「いいじゃない、そのフラれた人に私、もう一回フラれるんでしょ」
「・・・」
「西村さんにはそうする義務があるんじゃない?」
「だって、相手がどういうか」
「そこを知りたいの。でなきゃ、私は許さない」

 リコは、セックス上手だけでなく、突っ込み上手にもなっていた。
しかし、フラれてるとは言え、恋敵同士を会わせるなんて、アリか?

 でも、実を言うと内心【きっかけ】が出来たと思った。

「・・・ということになったんだけど、ケイ、どう思う?」
「どう思うって、シュンはどう思ってるの?」
「うん、望みは叶えるべきかと、でも、ジョーシキ的には・・・」
「そのジョーシキってなに?常識ある人が女を両天秤にかける?」
「いや、決してそんなつもりはなく・・・」
「いいよ、セッティングして」
「わかった・・・」


 どうも、僕は両方の女性の僕(しもべ)になったような。
そんなこんなで、中間点の井之頭公園で鼎談することになった・・・

 

「初めまして」
「初めまして」
「私が西村さんについては先輩に当たります。なので、一言訊きたい」
「ハイ」
「もう、いいんですか、西村さんのこと、別の人に乗り換えるんですか」
「乗り換えるって・・・」
「言い方が直截的ですみません、でも、私も真剣なので」
「真剣というのは」
「あなたが西村さんを捨てるのなら、私が西村さんを拾います」
「おいおい、オレは荷物か」
「あなたは黙ってて」
「そう黙ってて」

「今あなたにそれを明言する必要はあるかしら」
「それは卑怯です。私はいつもまっすぐに西村さんを求めてきました。それだけは自負できます」
「わかりました。あなたの覚悟に応えます。私はシュンが今でも大好きです」
「え?え?え?」


 ちょっとまて、そんな感じでいいのか?

 

 

 

「最後に西村さんに送ってもらってもいいですか」
「わかりました」

 そう言ってケイは帰って行った。


「リコ、ごめん」
「西村さん、飲ませて」
「え?」
「最後に。これが最後」
「わかった」


 公園を出てすぐの場所にある、昼間からやってる居酒屋に入る。
これまで何度かリコと訪れたことのある店だ。

「良かったね、ヨリがもどって」
「いや・・・」
「私の2年はなんだったんだろうね」
「ごめん」
「もういいよ」

元々酒に弱いリコが、その日は中ジョッキを二杯空けた。
そして、グラグラになった。
抱えるようにして電車に乗り、アパートまで送る。
部屋まで送り届けたら踵を返すつもりだった。

「気持ち悪い」
「大丈夫か」
「横になりたい。ベッドまで連れてって」
「・・・」

ベッドに寝かせると
「気持ち悪い、ブラはずして」
「え?」
「そのくらいしてくれてもいいでしょ、最後なんだから」

万歳をさせてポロシャツを脱がし、背中に手を回してホックをはずすと、綺麗な乳房が露わになる。
リコの胸は張りがあって、大きすぎず小さすぎない釣り鐘型で、小さめの乳輪の上に桃色の乳首がとんがっている。
いつ見ても綺麗だ。

「舐めて、そして吸って、いつものように」
「悪い、それはできない」
「なんでよ、いつもいっぱい舐めてくれるじゃない」
「でももう・・・」


 そこでリコが泣きじゃくり始める。
これ以上ここに居てはいけない。

「ホントにごめん」


 泣き続けるリコを残して部屋を飛び出す・・・

 


【14】

 国立駅前の公衆電話でケイに電話を掛ける。

「ケイ、これから行ってもいいか」
「送り届けたの?」
「うん」
「遅かったわね、何してたの?」
「最後だから飲ませろって言われたもので、一緒に飲んだ」
「彼女のその気持ちはわかる。でも、私の気持ちは?」
「え、だからこれからそっちに」
「来なくていい」
「なんで」
「どうしても」
「許してくれたんだろ」
「まだ許してない」
「え」
「当分来ないで」
「・・・」


 またまた堂々巡りループだ。
ま、悪いのは僕なんだから、忍耐強く待とう。

期末試験に没頭することで、ケイの気持ちが和むのを待った。
数日後、なんとか試験も無事終わり、帰省する前夜ケイに電話を掛ける。

「明日愛媛に帰る」
「え、そうなの?」
「うん、あっちでケイが許してくれるのを待つよ」
「・・・」
「でさ、もし、構わないならこれからそっちへ行ってもいいかな?」
「うん、待ってる」


 折しも、それは数十年ぶりに再開する隅田川花火大会の夜だった。
そのTV中継を眺めながら、

「泊まってってもいいか?」
「いいよ」
「許してくれる気になった?」
「それはどうかな」
「・・・」
「私も明日田舎に帰る」
「愛媛と岩手か」
「割とあるね、距離感」

 内心、その後の天野とのことを訊きたかったが、それは宿題とすることにした。
急いては事を仕損じる、ってか。
そして、その夜は柔らかく抱き合って眠る、静かに。

 翌早朝、まだ眠っているケイと書き置きを残して部屋を後にする。
『ケイ、泊めてくれてありがとう。愛してる。いつまでも。』
やがてまた、出逢った頃の二人に戻れることを確信して。

 外に出てみれば、すっきりとした青空が広がっている。
が、これから本調子になるであろう太陽のエネルギーが高まっているのが分かる。
出逢った日と同じだ。
でも、あの日より確実に夏はピークを迎えていた。
見上げて目を瞑れば、瞼の裏に線状に光のスパークが弾けた。
思えばたったひと月、後にも先にも、僕の人生においてこんな激動の7月は知らない。


 そのまま新宿駅に向かう。
そして途中、区役所通り【ウィザード】前を通過。
思えばひと月前、ここからケイとの逃避行が始まったのだった。
まだ人のまばらな新宿東口のスクランブル交差点を渡りながら、もう一度空を見上げれば、太陽が笑ってた・・・

 


【15】

 帰省したはいいが、ケイのことが気になって仕方ない。
一応実家の電話番号は交換したが、電話を掛けるのは流石に気がひける。
海の夕日を眺めながらケイのことを思う日々。
『このずっと先にはケイの住む町が』
いやいや、ここは瀬戸内海だし。
それを言うなら【この空の下には・・・】なんだろうけど。
兎に角、いつもケイと繋がってるという意識が欲しかった。

 半月も経ったろうか、夜、母が「電話かかっとるよ」と。
「誰?」
「女の子で西山さんとか」

ケイからだった。

「ごめん、電話しちゃった」
「いいんだよ、全然。どうした?」
「私、東京に帰ってきてるんだ」
「え、もう?」
「うん、田舎にいてもすることないし」
「そうだな」
「逢いたい。シュンに逢いたい」
「俺もケイに逢いたい」
「ねえ、帰ってこれない?」
「帰るよ、明日」
「嬉しい、待ってる」


 親には就職活動で急に帰らなくてはならないと嘘をついた。
そして翌朝、電車に飛び乗った。

いよいよ第二ステージか?
夕刻東京駅に着いて、その足でケイの部屋に向かった。

「お帰り!」
「ただいま」
「許してくれるのか」
「許す」
「良かった」
「だって、シュンがいないと寂しくて」
「オレも寂しかった。もう離さないから」
「うん」


 それから二人の晩夏が始まった・・・
名残りの夏、お互いの部屋を行ったり来たり。

 同じ【埴生荘】に住む恭子の自転車を借りて、二人乗りして新宿に遊びに出る。
ケイは荷台に座らず、後輪の車軸を足場に、僕の肩を手摺代わりにして立ったまま。
いつもの、BVDシャツにジーンズというペアルックで。
帰ってくると、水場で頭から水を被って涼を得る。
そして、エアコンなんて気の利いたものはない部屋で、お互いの汗を交換するようなめくるめくセックス。
正しく蜜月を過ごす。
僕もケイも、もうお互いの存在がなければ生きていけないと感じていた。

 そんな或る日、埴生荘の近くに開店した喫茶店でのことだった。
「なあ、せっかく二人とも休みなんだから、どこか泊りがけで遊びにいかないか?」
「いいねえ、どこにする?」
「笑うなよ、熱海なんてどう?」
「熱海?」
「うん、古い観光地だけど、最近またいいらしい。俺、まだ行ったことないんだ」
「いいよ、シュンと一緒なら何処でも」
「よし、じゃあ明日行こう」

僕はこれまで、帰省、上京を繰り返す度に新幹線の車窓から、トンネルとトンネルの合間のホンの瞬間見える熱海がずっと気になっていた。
ケイと行けるならサイコーだ。


 新幹線は使わずに、在来線をゆっくり行ったので、車内はさして混んでない。
車窓から入る朝日が清々しい。
ま、例え曇天だったとしても、二人にとってはサイコーなんだけど。

駅前の観光案内所で旅館の予約を入れた後、レンターカーで箱根に向かう。
熱海は坂の多い街、慣れないレンタカーで坂道発進、エンスト、かっこわる。
ターンパイクに差し掛かったところで突然の濃霧。
5メートル先も見えないような乳白色の外気。
後にも先にも経験したことのないような濃霧だった。

 翌朝、海の見える部屋の窓越しの朝日に照らされた、前夜の名残りを味わうように眠るケイの後ろから見えた薄っすら濡れて光るクレヴァス。
エロくて荘厳、思わず口づける。

 最高に愉しい夏。
それは飽くまで、二人がそれぞれ東京に暮らしていたから。

 いよいよこれからお互いの現実と向き合わなければならない・・・

 


例えばこんな【16】


 9月に入ってから、ケイは新たなバイトに通い出す。
それは、銀座のしゃぶしゃぶ専門店の中居だと聞いた。
一度、その制服のまま僕の部屋に帰ってきたことがあった。
その時僕は【ザ・ベストテン】を観ていた。
階下でドアが開く音がしたので、ケイだと思い部屋のドアを開けてみると、そこには浅葱色の着物姿のケイ。

「それ、制服?」
「そう、そのまま帰ってきちゃった」
「いいじゃない」
「だって、着こなしはプロですから」

そうなんだ。
ケイの実家は呉服店で、ケイは白百合女子短期大学を卒業後、渋谷の着物専門学校に通っている。
そして、ゆくゆくは実家の家業を継ぐ予定になっている。

そのタイムリミットが迫っていた。
あと4か月。
年内には、専門学校を卒業し、実家に帰らなければならない。

 この頃になってようやく僕たちは【後回し】にしていた現実と向き合わなければならなくなった。

 僕は僕で、ほぼ、実家の家業を継ぐ気になっていた。
父親が築き上げた地盤を受け継いで、大きくするのが長男の役目なのではないかと。
ただ、自分なりに新たな業種も増やしたい。
それは、いくつかの飲食店のバイトで培った経験を活かすべく、喫茶店を開業したいと、薄っすら考えていた。


 となると?
どちらかが折れなければ、結婚することはできない。
さて、どうする!?

 ま、取り敢えずは僕もバイトを再開しよう!
と、最後のバイトを探し始める。

そして見つけたのが、それまでとは毛色の違う、広告代理店の仕事だった。

 


 4年間の大学生活も、残すところ後、半年。
ホントにあっという間だった。
『後10年くらいあっても良かったのに』というのが本音だが、そう贅沢も言ってられない。
しかし、大学生という、世間から許されたモラトリアムは有難かった。
東京という地での様々な経験は、無いよりは有って良かった。
素直にそう思う。
ただ、東京は一生暮らす街ではない。
 
 僕が最初にそれを実感したのは、上京して間もない頃。
新宿駅で、山手線から京王線に乗り換えるときのこと。
国鉄から私鉄への連絡通路は、一旦階段を下りてまた上がる構造になっている。
その高い場所から見下ろしたときのこと。
結構な幅のある通路一面にびっしりと黒い頭が並んで移動している。
視界に入る場所一面がアリンコの行列みたく真っ黒なのだ。
そのとき『ああ、オレもこの中の一点でしかないんだな』そう思った。
あれからだ、『無理に東京にしがみつく必要はないな』と考えたのは。


 最後に【食い扶持】という観点から離れて、本当に興味のある場所で働こうと思った。
それが、広告代理店の仕事だった。

バイト先は、虎ノ門病院とホテルオークラに近い、さして幅の広くない道沿いにある信和広告という小さな広告代理店。
テレビラジオの仕事は少しで、主に雑誌新聞といった紙媒体が取引先だった。
僕の仕事はメッセンジャー、要するに運び屋だ。
広告の校正を届けて見本誌を貰って帰る。
端的言えば、そうした単純作業。
専用車としてスカイラインGTが与えられて、都内のほとんどの出版社、新聞社を回る。
事故を起こさぬよう、路上駐車の違反に気をつけて、その日与えられたルートを回る。
駐車場に停められるのは、音羽グループの講談社と光文社くらいだった。
それも運が良ければ、のハナシ。
かの集英社も小学館も、裏に回って路駐しなければならないお粗末さ。
なので、要領と運が悪いと切符を切られる危険性を常に孕んでいる。
半面、要領さえ掴めば、フリーな時間も捻出出来る、なかなか面白い仕事だった。
ポパイやブルータスの出版元である平凡出版社が銀座の歌舞伎座裏手にあるので、帰りに足を延ばして勝鬨橋の向こう、晴海埠頭に行ってみたり。
(因みに、雑誌太陽で知られる平凡社のロビーは一流ホテルと見まがうほどの荘重さ。よく似た社名だが、対極にあるような出版社だった)
また、ケイを助手席に乗せて、ドライブがてら一緒に回ったり。

 そこは、本当に最後のバイト先として、そろそろ大学も卒業という時期まで勤めた。
そして、あと数日という頃に、担当上司の佐々木さんから「社長がお呼びだよ」と告げられて、二階の社長室に出向くと。

「これまでご苦労様でした。西村くんと言ったね、君のことは佐々木くんからも報告を受けている。なかなか優秀だそうだね」
「恐れ入ります」
「聞けば、君は今年明治を卒業するらしいが、まだ就職先は決まってないとか」
「ハイ、まあ」
「どうだ、うちにこんかね。一応形式的な試験は受けてもらうが、わが社にも君のような人材が欲しい」
「ありがとうございます。でも、近い将来、田舎で家業を継ぐ気持ちでおりますので」
「そうか・・・そうか、それは残念だ。まあ仕方ない、でも、何かあれば、いつでも連絡してくれ」
「お世話になりました」

と、こんなやりとりがあった。
一瞬、若い頃だけなら、それもアリ?とも思ったが、そう簡単なハナシでもないだろう。
でも、もしパラレルワールドがあるとしたら、僕は東京でどう働いただろう?
そして、ケイとはどう暮らしただろう。
そんなことも考えてみると面白い・・・

 

 

 

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