宝島のチュー太郎

20年続けたgooブログから引っ越してきました

    冬でも生のまま舐める、店主はそれが好き

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存在のすべてを




 過日、新聞の書籍広告で絶賛されていたので読んでみた。
感想を端的に言えば、確かに緻密に構成されてはいるが、それほどか?という思いが残った。

 一見、ミステリー的な犯罪小説仕立てではあるが、本性は人間賛歌か?
土屋里穂と内藤亮のピュアな恋、その細かな心理描写は流石。
そして、野本貴彦と優美夫妻の亮への無償の愛情も心打たれる。

 また、逃亡生活を数か所に渡って送るそのロケーションも、手間と時間が掛かってることが想像できる。
ましてや、私のような記憶力の衰えたロートルには、覚え切れないような登場人物の多さ。
それら全てが、渾身の作品であることを主張している。
要するに、感心させられるファクターの多い作品。


 なので、敢えてその本筋からはずれた部分で印象に残った部分を書き残す。

まず、美術界の慣習について。
それが事実なのかどうかは知らないが、医学界が『白い巨塔』ならば、差し詰め、美術界は『赤き殿堂』か。
この悪しき慣習は重要なファクターであろう。
そして、写実絵画の立ち位置。
そんなに肩身の狭いカテゴリーなのだろうか。
この写実絵画に対する精神が、この作品のタイトルへの伏線か。

次に、漠たる疑問点を少し。
野本雅彦が残していったハイエースが度々活躍するが、そんな出来の悪い兄貴が残していくだろうか?
また、犯罪者の残していった車なんて、どうせ盗難車なのでは?
まず、そこんとこを疑るだろうし、だとしたら、それこそ『足がつく』元凶とならないだろうか?
駐車スペースはどうしたのだろう?

そして、兄弟でこれほど出来の良し悪しの差があるものだろうか?
ついでに言えば、亮の天才的な作画能力の遺伝子は?
ネグレクトの母親?
それとも一切登場してない父親?

荒探しのようで申し訳ないが、そんな些細な疑問が残る。




 それと、文中に登場する音楽と小説について。

まず、ジョージ・ウィンストンの【オータム】というアルバム。
その中でも特に【Longing/Love】が効果的に使われている。
1980年代に大ヒットした作品で、私も2枚持っている。
それについては、明日、書こう。

そして、サマセット・モームの【月と6ペンス】という小説。
私の記憶によれば、ちょっと知恵遅れの大男が登場するはず?
と、更に記憶の皺を伸ばしてみれば、それはスタインベックの【ハツカネズミと人間】との錯誤だった。
で、肝心の【月と6ペンス】だが、キンドルアンリミテッドにあったので、後で読んでみようと思っている。


 最後に、締めくくりだが、貴彦はどうなったのだろう?
雅彦を消して自分も消えた?
亮に対する深い愛情を思えば、私はその流れを想像するが、それには敢えて触れてない。


 そこんとこが深くて上手い・・・