昨晩、録画してあった砂の器を観た。
フジテレビ開局60周年記念ドラマということらしく、キャスティングが凄い。
ワンシーンしか登場しない、いわゆるチョイ役にも有名俳優が配されている。
そのせいか、CMの多くて長いこと、これには閉口した。
録画して早送り出来たから、ストレスは軽減されたが、あれ、リアルタイムで観てたら、嫌になったろうと思う。
それにしても、脚色だ。
原作では、昭和30年代?まだ古い日本が舞台だった。
その背景を現代に置き換え、事件の根源の設定を、また殺人に切り替えている(以前、やはりどこかの局がTVドラマ化したことがある)。
あれは、当時大きな社会問題だった差別が引き金だったという原作のままでなければ、辻褄が合わない、というか、不自然で無理やりな感じがどうしてもつきまとう。
「差別」すなわち、世間全体が忌み嫌った病気に罹患した者が受ける迫害。
その病気は「癩(らい)病」と呼ばれ、私が幼少の頃にも、隔離病棟の名残りがまだ各地にあった。
確か、関ケ原の戦いでその名を馳せた大谷吉継も、その病気に苦しんだのではなかったか。
ウィキによれば、
業病とは前世の罪の報いとして発する病気という意味で、非常に治りにくい病気・あるいは不治の病の総称として使われたが、特に相貌に著しい病変を起こすハンセン病は近代になるまで業病の一種として忌み嫌われていた[5]。吉継がハンセン病であったと断定されているわけではないが、『本願寺日記』には千人斬りで騒がれたのは吉継が癩病(らいびょう、ハンセン病のこと)の患者で人体のある部分を(食するために)必要としたのだとする説を載せている[6]。その他の病名として組織壊死まで至った末期梅毒説もある。
このように、一旦その病気を得ると、世間から忌み嫌われ、住んでいられない状況に追い込まれる。
それが故に、幼い我が子の手を引き、生まれ育った村をそっと出て、食うや食わずで放浪の旅を続ける父親、これを演じたのが加藤嘉(よし)。
あ、ここからは、松本清張の原作を初めて映画化した、1974年の映画のハナシ。
まず、この加藤嘉の存在感が凄かった。
次に記憶に残っているのが、ベテランと若手の刑事コンビ。
これを、丹波哲郎と森田健作が演じるのだが、この二人がコツコツと事件の核心に近づいていく過程が、ドラマの進行に大きく貢献した。
そして、その親子を助けた警官役の緒形拳、これも良かった。
この善意の人が居なければ、放浪の親子はどうなっていたか。
それなのに、その恩人を自分の保身の為に惨殺してしまう。
このいたたまれない構図が、このドラマの肝である。
そして、そこには頷かされるべき心理描写が描かれなければならない。
すなわち、いわれなき差別と宿命。
私は、これがこの物語のテーマだと思っている。
なのに、殺人が引き金では、整合性が崩れる、そう思う。
勿論、ハンセン病に対する差別を助長するという観点から、そこをそのまま描けないのだろうということは理解できる。
だが、映画製作の段階から既にその葛藤はあったらしい。
以下、ウィキペディアから引用。
この映画において、ハンセン氏病の元患者である本浦千代吉と息子の秀夫(和賀英良)が放浪するシーンや、ハンセン氏病の父親の存在を隠蔽するために殺人を犯すという場面について、全国ハンセン氏病患者協議会(のち「全国ハンセン氏病療養所入所者協議会」)は、ハンセン氏病差別を助長する他、映画の上映によって“ハンセン氏病患者は現在でも放浪生活を送らざるをえない惨めな存在”と世間に誤解されるとの懸念から、映画の計画段階で製作中止を要請した。しかし製作側は「映画を上映することで偏見を打破する役割をさせてほしい」と説明し、最終的には話し合いによって「ハンセン氏病は、医学の進歩により特効薬もあり、現在では完全に回復し、社会復帰が続いている。それを拒むものは、まだ根強く残っている非科学的な偏見と差別のみであり、本浦千代吉のような患者はもうどこにもいない」という字幕を映画のラストに流すことを条件に、製作が続行された。協議会の要望を受けて、今西がハンセン氏病の患者と面会するシーンは、シナリオの段階では予防服着用とされていたが、ハンセン氏病の実際に関して誤解を招くことから、上映作品では、背広姿へと変更されている[17]。
勿論、現代において、この病気自体に馴染みがないことも、理由の一つには上がるだろう。
でも、それを云うなら、樹木希林さんが演じた映画あんはどうなる?
あの映画は、せいぜい数年前にリリースされたものだ。
病気に対する無理解な差別と、それに翻弄される宿命、そこを描けなければ、砂の器をこれ以上映像化する意味が無い。
私は、そう思う。
あ、それと、劇中に出てくる「宿命」というピアノ協奏曲も、私は、映画のそれが好きだ・・・
砂の器 ピアノ協奏曲 「宿命」
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