宝島のチュー太郎

20年続けたgooブログから引っ越してきました

    冬でも生のまま舐める、店主はそれが好き

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おもかげ

 物語は、主人公の仕事仲間の行動から始まる。
その人は、ほぼ冒頭部分だけで、後は回想シーン以外は出てこない。

途中、主人公にまつわる親友や家族が登場し、それらに絡めて、謎の婦人が年代毎に出てくる。
その辺りは、読み手としては、五里霧中。
(勘のいい人なら先回りできたかも。でも、私は勘のいい人間ではない)

 やがてそれらが、最後の章で、一気に霧が晴れるように繋がってくる。
その人間関係とプロットは見事。

戦争、棄児、家族、夫婦、親子、友人・・・
様々なファクターを通して人生のしあわせとは何かを問う。
そのように感じた。


 親の愛情を受けて育った身からは、「親に捨てられる」という事実、自分が何者なのか分からない心許なさ等、主人公の業のようなものを真に理解出来てはないかもしれない。
しかし、その上で、捨てざるを得なかった状況と、それを丁寧に説明した文章の組み立て方に手練手管を感じる。
流石の浅田次郎。


 彼の初期作「地下鉄(メトロ)に乗って」でも、戦時中の地下鉄が舞台装置の鍵になっていた。
一体、彼は地下鉄に思い入れがあるようだ。


 作中に登場するメインのそれは、丸の内線。
私もその沿線の東高円寺に住んでいたので、その背景が手に取るように理解出来て愉しかった。

そこで思い出したその頃のこと。
東高円寺に住むようになったきっかけは、高校時代の友人が住んでいた、その地にあるアパート。
埴生荘というそれは、ちょっと変わった構造になっていて、二階は二つの部屋のドアが階段を挟んで向かい合っていて、突き当たりに共同のトイレがあった。
そして、部屋には小さな台所がある。
そんな部屋が二階に六部屋(階段が三本で、その入り口のドアが三つ)

今では、そんなレイアウトは不安要素になるかも知れないが、共同トイレや炊事場が当たり前だった当時のアパート事情の中では、かなり良い方だった。
周辺の環境といい、住みやすそうなその構造といい、とても気に入った。
そして、結局は後年、そこの住人になったという訳だ。

実は、その友人とは、ガールフレンドの女友達で、彼女が上京する度にそこに泊まっていたので、何度か訪れたもの。
そしてその最初の頃、私はまだ西武池袋線沿線に住んでいた。

夜も更けて、埴生荘から帰路に就く。
当時は、朝日新聞奨学生の身故、外泊は御法度。
そして、自由時間も実にタイトだった。
東高円寺から三つ目が新宿(今は西新宿が増えてるようだが)。
そこで山手線に乗り換えて池袋(駅が四つくらいだったか?)まで行き、そこから西武池袋線に乗り換え、五つ目の中村橋で降りる。
普通はこう。
ドアツゥドアで、所要時間は一時間弱くらいだろうか。

ところが、その時の私は猛烈に疲れていた。
丸ノ内線の最終駅はやはり池袋。
じゃあ、乗り換えを一回減らそうか、と考えた。
勿論、距離は相当増える。
でも、座席から立ち上がる気力が湧かなかった。

結局、そのまま新宿を通過。
お茶の水辺りをぐるっと迂回して、終点に着く頃は、それだけで1時間余り要したんじゃなかったか。







 丸ノ内線沿線の思い出は、他にもそれぞれあるが、それはまた後日。
てか、思いっきり脱線やんか。

 まあ、電車のことだから・・・



追記

書き忘れたことがある。
勿論、取材の賜なんだろうけど、ICUや看護師の事情がよく表現されている。
「チュー太郎」のお客さんに、看護師さんたちがいる。
彼女たちに薦めたい本です。






おもかげ
クリエーター情報なし
毎日新聞出版






 ついでに・・・
この曲は、正しく私がそこを闊歩してた頃にリリースされたもの。
その内容から、丸ノ内線のことだろうと・・・


猫 『地下鉄にのって』♪