昔、銭湯で水をかぶっているおっちゃんがいた。
馬鹿じゃないの?
と思っていた。
大体が銭湯という奴はかなり熱めの湯になっていて、微温湯好きの私は、入るのに難儀した覚えがある。
おっちゃんたちは平気の平左で浸かってる。
でもって仕上げは水かぶりときたもんだ。
おっちゃんたちの神経が鈍いのか、それとも私がヤワなのか、首を捻ったものである。
それが昨今、ついに私自身がそのおっちゃんの域に達して、やってることがその昔見たおっちゃんと同じになっていることに気づく。
事の起こりはサウナである。
そこに付き物の水風呂。
最初は横目で眺めるだけの存在だった。
それがある日、ふと「入ってみようか」と思ったのである。
それはホンの気紛れだった。
それが、入ってみると、さほど辛くはないのである。
おまけに、その後サウナに再び入ると、長持ちするし、汗も余計に出るのである。
それからは水風呂に入る機会が増えて、段々と水風呂自体の快感が判るようになった。
今では、水風呂のないサウナなんて、日本酒のない刺身みたいなもの、とまで思うに至った。
調べてみると、どうやらそれは理にかなったものらしい。
詳細は面倒臭いので控えるが、副腎皮質ホルモンだったかな?そんなものが分泌されるから体に良いのだとか。
でもって、家庭で風呂に入ったときも、特にこの季節なんぞは、湯冷めを防ぐのに有効なのは、水シャワーを浴びることだという。
よく暖まった後、出る直前に水シャワーを2~3分浴びると、体の芯に熱が残って、湯冷めをしないらしい。
そんなことから、最近では湯船に浸かって、自然に額から汗が流れ落ちるようになるまでじっと沈思黙考する癖がついた。
5分もあれば入浴を終えるという烏の行水だったものが、最低でも30分は入っているようになった。
ただ、水風呂と比べて、水シャワーは未だに「ヒョオウ~」なんて声を発しながら浴びている。
やはり、冷たいものは冷たいのである・・・
